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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

米沢人はその中での勢力のある部に属して居る。日常の事はさほどの事はないけれ共、少し重立った事になると生国の違いと云う感じが都の者ほどさっぱりとは行かず、とけがたいわだかまりになってお互の一致を欠くのであった。

土地の大抵は粘土めいたもので赤土と石ころが多く、乾いた処は眼も鼻も埋めて仕舞いそうな塵となって舞いのぼり、湿った処はいつまでも、水を吸収する事なくて不愉快な臭いを発したり、昆虫の住居になったりする。長年耕された土地でさえも肥料の入るわりに良い結果は表れない様な地質である、その上に耕すのも、ならすのも、収獲するにも、工業的の機械を用うる事はなく、鍬、鋤、鎌などが彼等唯一の用具であくまでもそれを保守して、新らしい機械などには見向きもしない有様で、それだから機械などはほとんど村に入り込んでは居ない様子である。

地質がよくないとは云え、機械農業が発達さえすれば、今までより少しは多く収獲が有るのは定まった事だろうのに、農民は、発明される機械を試用する気にならず、又其を十分利用するだけ、序的な頭脳は無いものの方が多いのでもあろう。

斯うして、荒れやすい土を耕し、意地の悪い冬枯と戦うにも只、昔からの伝習だの、自分の小さい経験などを頼む事ほかしない。