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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年4月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 页
博多の町中、行く先々、右も左も虱の卵生み付けたゴト不義理な借銭ばっかり。真正面の青天井に見当を附けて兵隊さん式にオチニオチニと歩まぬと、虱の卵を生み附けられた顔がイクラでも眼に付きます。その虱の卵が一つ一つに孵化て、利が利を生みよる事を考えると、トテモ博多の町に居られた沙汰では御座いませぬ。こげな事にかけますと私はドウモ気の小さい方と見えまして……ヘイ。
私の女郎買とバクチの先達で大和屋惣兵衛、又の名を大惣という男が居りました。最前チョットお話ししました棺の中でお経を聞いてビックリした豪傑で、お寺の天井に居る羅漢様と生き写しの面相で、商売の古道具屋に座って、煙草を吸うております中に蜘蛛が間違えて巣を掛けよるのを知らずにおったという大胆者で御座います。
平生から私の事をドウ考えているか判然りませんでしたが、イヨイヨ押詰まった師走の二十日頃にこの男の処へ身の上相談に行きますと、相変らず煤け返った面で古道具の中に座っておりましたが、私の顔をジイッと見ながら、黙って左の掌を出せと申します。何を云うかわからん、気味の悪いところがこの男のネウチで、啣え煙管のまま私の掌を見ておりましたが、