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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年4月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 页
もとより無学文盲の二人の事とて、法律の事なんか全く知らず、盲判も同然で金額なども全然忘れたまま仲よく交際していた。
ところがどうした天道様の配り合わせか、間もなくその又木が四十五歳を一期として胃癌で死んだ。お蔭で思いがけない巨額の金が、二人の懐に転がり込んだので二人は少なからず面喰った。
「何でも構わぬ。約束は約束じゃ。出来るだけ賑やかに葬式をしてやれ」
というので立派な石塔を建てた上に永代回向料まで納めてしまったが、それでも余った相当の金額を持ってソンナところは無暗に義理固い篠崎、水野の両保証人が、又木の本籍地へ乗込んだ。色々身よりを探しまわって又木の後を立てるべく苦心したが、その又木のアトがどうしてもわからない。そこで……これでは詰まらん博多へ帰ろう。又木の菩提追福のためにこの金を潔く女共へ呉れてしまおう……というので仕事の休み序に柳町に押上り、あらん限りの太平楽を並べて瞬く間に残金を成仏させて帰った。そうして帰ると直ぐに二人で一パイ飲んだ。
「ああ清々した。しかし水野、保険というものはええものじゃねえ」
「ウン。こげな有難い物たあ知らんじゃった。