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きんせいかいじんでん

近世快人伝

夢野 久作

「新青年」1935(昭和10)年4月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 页

青空文庫

むろん頭山満も貧乏の天井を打っている時分だ。俺にも相談だけはしてくれたが、三月縛り三割天引という東京切ってのスゴイ高利貸連を片端から泣かせて、

かくばかりたふしても武蔵野の

原には尽きぬ黄金草かな

なんてやってた時代だから満蒙経営どころか、わが家賃を払うのすら勿体ない非常時なんだ。

そこへ誰が聞いて来たか、ドエライ話が転がり込んで来たもんだ。その頃まだ元気で居た日本一の正直物、大井憲太郎という爺さんが、眼の色を変えて担ぎ込んだ話のようにも思うが、とにかくこんな話だ。……その頃まで北海道の砂金といったらカリフォルニヤの向う張る勢いで、しかも夕張川の上流の各支流の源泉附近は到る処、砂金ならざるなしという評判で、全国の成金病患者がワンワンと押しかけていたものだ。……ところが不思議な事に、その砂金が、本流の夕張川の下流に在る名前は忘れたが一つの大きな滝を段階として、その下流には一粒の砂金も見当らない。つまるところ、その滝壺の底にはイザナギ、イザナミの尊以来、沈澱している砂金が、計算してみると四百億円ぐらいは在るらしい……というのだ。エライ事を考えたもんだ。