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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年4月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 页
金将たり、銀将たり、飛車角、桂香を以て自ら任じつつ飯喰い種にして行く者が滔々として皆然りであるが、その飯喰い種を皆棄てて、将棋盤の外にいて将棋を指している奴は、なかなか居るものでない。だから世間の事が行き詰まるんだ。あぶなくて見ていられなくなるんだ」
という、頭山満以上の超凡超聖的彼自身の自負的心境を、そっくりそのまま認めてやらなければならなくなって来るのであるが、彼とても人間である。時と場合によっては平凡人以下の血もあり涙もあるばかりでない。彼の手に合わない人物も多少は出現して来るのだから面白い。
頭山満曰く、
「杉山みたような頭の人間が又と二人居るものでない。彼奴は玄洋社と別行動を執って来た人間じゃが、この間久し振りに合うた時には俺の事を頭山先生と云いおった。ところがその次に会うた時は『頭山さん』とさん付けにして一段格を落しおったから、感心して見ていると、三度目に会うた時は頭山君と云うて又一段調子を下げおった。今に俺を呼び棄ての小僧扱いにしおるじゃろうと思うて楽しみにして待っとる」
これは杉山法螺丸の一番痛いところに軽く触れた言葉で、実に評し得て妙と云うよりほかはない。