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ついぼ

追慕

宮本 百合子

「大横浜」1920(大正9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,353 字 · 5 页

青空文庫

自分が悪い沢山の事を知ったように、彼の先生も種々の醜い事を知ったり知らされたりなさっただろう、そして又その醜悪に対比した「よさ」、より輝き、より恒久的な真実の「よさ」をも、見出し、或は見出そうと仕て居られるだろう、先生も育たれた。私も育った。

先生は今何処に被居っしゃいますか。

生命の萌芽が、一寸の幹を所有するまでの専念な営み――。人は其前に頭を垂れる心を持つべきではないだろうか。

先生は可愛いのだから、此那事を云いたく無い、厭だ厭だと思いながら、西日の差す塵っぽい廊下の角で、息をつまらせて口答えを仕たお下髪の自分を思う。――その時分私は自分を詩人だと思っていた――。

七月の日は麗わしい。天地は光りに満ちている。が心に微風が吹く――あとから、あとから微風が吹いて通る――。

〔一九二〇年二月〕