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とじょうのはんにん

途上の犯人

浜尾 四郎

「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页

青空文庫

彼のアリバイを立証する事が出来ます。私は、少くも法廷で証人になる覚悟はありますよ」

「ほほう、ほんとですか」

「無論、嘘は云いません」

「いや、見まちがいはないかと云うものです」

「たしかに、間違いはありません」

此の時、又司法主任が来て署長と私語を交した。終ると署長は不相変、微笑を浮かべたまま私に云った。

「相川は自分の子を殺した事実をすっかり自白したそうです。司法主任のきいた所によれば、まさしく真の自白らしいそうです。それから何だか大変あなたを恨んで居るそうですよ。あなたにもう一度会いたいといって居るそうですが、お会いになりますか」

署長の言葉には、私は無論会うまいという予期と無論会う必要はないから拒絶されたらよかろうという心遣いが表われて居た。

「危険さえなければ、ここで会いましょう」

「それは私の方で責任をもちます。では会いますね」

署長は私に一応念を押しておいて、改めて司法主任に合図をした。司法主任は一旦室を出て行ったがまもなく又現われた。後から相川が二人の刑事に守られて姿をあらわした。

彼は署長らの前で、私に車中でしゃべったあの恐ろしい犯罪の話をもう一度くり返した。