轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とじょう
途上
谷崎 潤一郎
「改造」1920(大正9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,060 字 · 32 页
そんな頼りにならない偶然を頼りにする奴もないでしょう」
「そうです、たった三十回自動車へ乗せただけなら、その偶然が命中する機会は少ないと云えます。けれどもいろいろな方面からいろいろな危険を捜し出して来て、その人の上へ偶然を幾つも幾つも積み重ねる、―――そうするとつまり、命中率が幾層倍にも殖えて来る訳です。無数の偶然的危険が寄り集って一個の焦点を作っている中へ、その人を引き入れるようにする。そうなった場合には、もうその人の蒙る危険は偶然でなく、必然になって来るのです」
「―――とおっしゃると、たとえばどう云う風にするのでしょう?」
「たとえばですね、ここに一人の男があってその妻を殺そう、―――死に至らしめようと考えている。然るにその妻は生れつき心臓が弱い。―――この心臓が弱いと云う事実の中には、既に偶然的危険の種子が含まれています。で、その危険を増大させるために、ますます心臓を悪くするような条件を彼女に与える。たとえばその男は妻に飲酒の習慣を付けさせようと思って、酒を飲むことをすすめました。最初は葡萄酒を寝しなに一杯ずつ飲むことをすすめる、その一杯をだんだんに殖やして食後には必ず飲むようにさせる、こうして次第にアルコールの味を覚えさせました。