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しぜんかいのきょぎ
進化と人生(下)
丘 浅次郎
丘浅次郎『進化と人生(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:自然界の虚偽、進化論と衛生、動物の私有財産、民種改善学の実際価値、我らの哲学。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 页
そもそも近来にいたって従来の衛生学専門家が急にはげしく自然淘汰説に反対を始めたのはなぜかというに、ほぼ次のごとき考えが基になっているのではないかと思う。すなわち自然淘汰説では生存競争においてまさった者が生き残り、劣った者が死に絶え、自然淘汰が行なわれるので動植物各種が漸々進化するのである、不適者の滅亡ということが万物の進歩する一大原因であるというが、医術衛生の仕事はまったくこの反対で、弱い者でも劣った者でも助けて生存せしめ、自然にゆだねておいたらただちに死んでしまうべきものでも、人工的の手当をほどこして生存せしめ繁殖せしめるのであるから、自然淘汰説と衛生とはとうてい両立せぬもののごとくに見え、自然淘汰説に従えば衛生は有害無益なものであるかのごとくに考えられ、もし世間に自然淘汰説があまねくひろまったならば、自分らの専門に研究しきたった衛生学が、まったく立場を失うにいたりはせぬかとの心配から、かく衛生学者が反対論を唱え出したように思われる。
しかるに実際において自然淘汰論者の中に、衛生は無用なものであるなどと論じている者があるかというに、さような暴論をはく者は一人もない。