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しぜんかいのきょぎ

進化と人生(下)

丘 浅次郎

丘浅次郎『進化と人生(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:自然界の虚偽、進化論と衛生、動物の私有財産、民種改善学の実際価値、我らの哲学。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 页

青空文庫

医は仁術なりというが、もし進歩した医術の力によって、先天的にきわめて虚弱な体質を有する者を助け生存せしめ生殖せしめて、さらに虚弱なる子を遺させるごときことがあったならば、決して次代の国民に対して仁なりとはいわれぬ。次代の国民はかかる虚弱な厄介者を引き受けたるために、各自の負担が重くなり、かえって医術の進まなかった昔を慕うかもしれぬ。慈善はもとより結構なことであるが、単に目前の感情に動かされて、社会的生存に適せぬ精神上の不具者を憐み助けて生殖せしめ、さらにいっそうの不具者を遺させるごときことがあったならば、これまた決して次代の国民に対して慈悲なりとはいわれぬ。次代の国民はかかる不具者の存するために非常な迷惑をこうむり、かえって先代の残酷なる慈悲をのろうかもしれぬ。その他財産、門閥等の関係から、虚弱な愚物が生存し繁殖し、身体、精神ともに、それよりはるかにまさった者がかえって生活難のために子を遺し得ぬこともつねに見るところであるが、これらも純粋に民種改善学の上のみからいうと何とかして位置を取りかえてやりたいものである。要するに今日の民種改善学はまだ単に実験、観察、統計によって遺伝の現象を精密に調べているだけで、ただちに実行のできる事項ははなはだ少ない。