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みちづれ
道づれ
宮本 百合子
「文芸」1937(昭和12)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,491 字 · 41 页
「行くか?」
「ああ」
書類鞄をかかえた山原を加えて重吉、光井が一団となって再び狭っくるしい裏小路から往来へ出た。
夕方は雨になりそうであった空が夜にいってから冴えて、昼間の烈風ですっかり埃をどこかへ吹き払われてしまっている大学前の大通りは、いつもより一層広くからんとしたように見とおしが利いた。星が出ている。
暫く賑やかな方へ歩いて行ったとき、山原が、
「おい佐藤、少しひどいぞ」
と云った。
「現在の自分のおくれている部分の水準へ引下げて今日の歴史の到達点を云々するのは誤りである、なんて、正々堂々と満座の中でやられちゃ浮ばれない。――俺の岩見重太郎だって一つの戦術だよ。或は佐藤重吉に花をもたせるつもりだったかもしれないじゃないか」
重吉はかぶっているソフトの鍔を表情のある手頸の動かしかたで黙ってぐっと引下げたが、
「しかしああいう場所で云われる言葉は、それとしてやっぱり客観的な影響をもつものだからね」
と云った声の調子には、おだやかで説得的なあったかささえこもっていた。
「それに問題が問題だろう? 相当大事なんだと思うんだ。なかなか一朝一夕には解決しないことなんだろうなあ。