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みちづれ
道づれ
宮本 百合子
「文芸」1937(昭和12)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,491 字 · 41 页
「失敬、失敬。おくれた」
重そうな書類入鞄を下げて、山原が入って来た。
「どうした」
すこしおとした声に親愛の響をもたせながら山原は重吉の顔を見て、その隣りにどっかりと無雑作にかけた。
あと二人ばかり来て、愈々会がはじめられた。発行されたばかりの雑誌「新時代」についての意見がもとめられた。文科の伝統をひいている「新思潮」と是とは別のもので、遙に急進的でもあり、熱量をも持っていた。ここへは、従って、文学を専攻科目としてはいないが、めいめいの人生的な、時代的な要求から、新しい芸術の価値を溢れさせて迸り出た文学運動の方向に沿うている連中があつまった。文科のものは独文の戸山、英文の横井、光井ぐらいであった。農科に籍のあるものもいた。プラウダ主筆山原は法科である。はっきりプロレタリア文学だけを標榜しているのではない雑誌の性質から、詩や小説には時折、同じ雑誌にのっている論文などと比べると全く方向も趣味も逆なようなものがのせられることがあった。
山原が、
「議長」
と声をかけ、つづけてずばずばした調子で、
「『都会の顔と機械』って詩は、ありゃどういうんかね。左翼的キュービスムとでも云うのかしらんが、妙だぞ」