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どうかんやま
道灌山
宮本 百合子
「婦人」1948(昭和23)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,015 字 · 16 页
おじさんは説明しない。自然、子供たちは、お母さま、ああちゃん、とそれぞれのよびかたで母に向って、おじさんからきかれたことをそのままくりかえして、なあに、ときいた。そのたびに、母は顔色をかえるぐらい怒った。子供のきくことに答えるよりさきに、下島のおじさんをよんで、面と向って、はげしく罵るぐらいに怒った。母の怒りがあまりつよいから、母とおじとをとりまいて息をこらして見物している子供の心には母の怒のはげしさに焼かれ清潔にされたように、おじさんの云った変なことより、母の迸る憤りがやきつけられるのだった。
富樫という書生もいた。書生といっても髭をはやしていて、おかみさんもうちにいた。おかみさんの方が、富樫よりも体が大きかった。富樫さんはノミの夫婦と云われていた。そばかすが頬にあるのを、わたしは珍しく思った。そして、はつ、これなんなの? と云って頬っぺたの雀斑をさわった。そしたら、はつは、乱暴にくびをふってわたしの指をはらいのけ、どうせ、はつはお母さまのようにきれいじゃありませんよ! と、わたしを自分のそばからつきのけた。そう云いながらぐんとつきのけた。その感じからはつがきらいになったほど、荒っぽくつきのけた。