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せんきょにんにあたう
選挙人に与う
大隈 重信
「新日本 第貮卷第五號」冨山房、1912(明治45)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,553 字 · 15 页
しかしながら政府と等しく、国民もまた責なきに非ず。私は常に言うのである、「選挙権は陛下が国民に下し給える鍵である」と。然るに国民はその鍵を抛棄て顧みぬとは何事であるか。この大切なる鍵を泥棒に渡しその宝を奪われて、初めてその過ちを覚るとは何事ぞ。立憲的国民としてこれほど君主に対して不忠実なることは無いのである。君恩を賊するというものだ。而してその結果は如何なるかというと、まず官民の堕落、官民の堕落は政治の腐敗、政治の腐敗は即ち国民の苦痛、生活難を惹き起すという風に、自ら蒔きたる種は自ら穫らねばならぬ。選挙権を疎かにしたる報いは忽ち国民自身の頭上に落ち来り、種々なる悪弊の惨禍を蒙らねばならぬ。その時になって、国民は不平を鳴らしても苦痛を訴えても追付くものでない。あたかも道楽息子に実印を渡した様なもので、借用証文にベタベタ判を捺してしまったのにも気付かず、執達吏が押し懸けて来て愈々強制執行をされる段になって、初めて大騒ぎをすると同然である。
およそ国家の法律は一字一句といえども帝国議会の協賛なくしてはこれを発布することも、改廃することも出来ぬのである。