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せんきょにんにあたう
選挙人に与う
大隈 重信
「新日本 第貮卷第五號」冨山房、1912(明治45)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,553 字 · 15 页
かくのごとくにして、選挙人も候補者もただただ私利を図る事にのみ汲々として、更に公徳心の何たるを弁えぬ様になったから堪らない。いわゆる目的は手段を択ばずで、盛んに投票の売買をやる。それから更に進んでは、市町村の利益を以て選挙区民を誘惑する。例えば我が党から議員を選出してくれれば、この地方に鉄道を敷設してやるとか、港湾を修築してやるとか、学校を建ててやるとか、堤防を築いてやるとか、その他種々なる地方的利益を好餌として選挙区民を釣る。かくて府県会、農会、教育会、土木組合、もしくは農工銀行という様な種々の機関と結託し、これを利用して選挙の目的を達せんとするのである。甚だしきに至っては、郵便局あるいは警察署というが如き行政機関をまで利用する。しかもこういうことはただに個人としてやるばかりでなく、ある時には当局者もまた自己の政略上から、陰に陽にその尻押しをする。換言すれば、これ選挙の干渉であるが、ただ従前の如くそれが激烈で露骨でないというだけで、やはり干渉には相違ない。しかも巧妙にして陰険なる干渉である。
そこで今日はもはや選挙というものはほとんど無意義となってしまって、候補者が当選すると否とは、第一に運動費の多少、第二に地方の公共団体や地方の行政機関と結託すると否とに依って決せらるる状態となった。