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いこん
遺恨
「娯楽世界 第二巻第五号」銀五書房、1948(昭和23)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,706 字 · 22 页
梅木先生はめったに子供をあやしたことなどないのだけれども、部屋へあがると、子供が脅えた顔をしている。いそいで、だきあげて、どれどれ、アバババ。けれども、子供はギャアと泣きだす。そうだろう。親父は蒼ざめ、かみつくような顔なのである。
けれども先生は妙に熱を入れ、子供をあやすのじゃなくて、泣き喚く機械を調節するような手ぶりでいじっているのであったが、急にあきらめて投りだして、物も云わず、フトンをかぶってねてしまった。
これが事態を悪化させたのである。
アキ子は学生の一人の宿へ泊り、ずるずるべったり、同棲してしまった。この学生は、殴られた学生ではなかった。
先生の留守に、自分の持ち物を運びだす。数日かゝって、自分のものをみんな運んでから、先生のところへ挨拶にきて、
「私なんか、居ない方が、あなたの身のためよ。なまじ私みたいな女がいるから、あなたはカイ性なしの敗残者なのよ。立派な人になって下さいね。ハイ、さよなら」
と、云って、行ってしまった。
殴られた学生は、その後も、遊びに来た。彼らは、お人好しのウスバカであった。
「見ちゃ、いられないよ、なア、毎日、ベタベタしてるんだもの、ひどいよ」