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いこん
遺恨
「娯楽世界 第二巻第五号」銀五書房、1948(昭和23)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,706 字 · 22 页
稀れに雑誌社から十枚二十枚の寄稿をたのまれることがある。すると給料と同額ぐらいの稿料を貰うけれども、毎月というわけではなく、毎月にしたところで、合せて、お茶汲みの女給仕に及ばない金額であった。
だから先生の生活はもっぱらタケノコに依存しており、キモノを売り、タンスを売り、細々と生きる。
先生の家族は、先生の母と二人の子供と女房アキ子の五人暮しであった。
アキ子は亭主を徹底的にカイ性なしの敗残者と思っていた。原稿を書けば売れるのだからセッセと書いて稼ぎなさい、とすすめるのである。脅迫の見幕であった。然し、先生の原稿はセッセと書いて持ちこんだところで、メッタに買い手が有りやしない。それを心得ているから、先生は売りこみにムリなアガキをしないだけだが、それをアキ子はカイ性なしの敗残者だと云うのであった。
アキ子も自分の持ち物を売って金にした。然しそれは一家の生計のためではなしに、自分の遊び歩きのためで、二人の子供にミカンやアメダマを買ってやることすらも、稀れにしかなかった。
先生は大学生を咒った。先生は栄養失調の気味であったが、教室で見る大学生はみんなマルマルとして血色がよく、年中タバコをすっていた。