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じゃしゅうもん
邪宗門
「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页
そう云う勢いでございますから、日が経るに従って、信者になる老若男女も、追々数を増して参りましたが、そのまた信者になりますには、何でも水で頭を濡すと云う、灌頂めいた式があって、それを一度すまさない中は、例の天上皇帝に帰依した明りが立ち兼ねるのだそうでございます。これは私の甥が見かけたことでございますが、ある日四条の大橋を通りますと、橋の下の河原に夥しい人だかりが致して居りましたから、何かと存じて覗きました所、これもやはり摩利信乃法師が東国者らしい侍に、その怪しげな灌頂の式を授けて居るのでございました。何しろ折からの水が温んで、桜の花も流れようと云う加茂川へ、大太刀を佩いて畏った侍と、あの十文字の護符を捧げている異形な沙門とが影を落して、見慣れない儀式を致していたと申すのでございますから、余程面白い見物でございましたろう。――そう云えば、前に申し上げる事を忘れましたが、摩利信乃法師は始めから、四条河原の非人小屋の間へ、小さな蓆張りの庵を造りまして、そこに始終たった一人、佗しく住んでいたのでございます。
十三
そこでお話は元へ戻りますが、その間に若殿様は、思いもよらない出来事から、予て御心を寄せていらしった中御門の御姫様と、親しい御語いをなさる事が御出来なさるように相成りました。