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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页

青空文庫

されば予が世尊金口の御経も、実は恋歌と同様じゃと嘲笑う度に腹を立てて、煩悩外道とは予が事じゃと、再々悪しざまに罵り居った。その声さえまだ耳にあるが、当の雅平は行方も知れぬ。」と、いつになく沈んだ御声でもの思わしげに御呟きなさいました。するとその御容子にひき入れられたのか、しばらくの間は御姫様を始め、私までも口を噤んで、しんとした御部屋の中には藤の花のばかりが、一段と高くなったように思われましたが、それを御座が白けたとでも、思ったのでございましょう。女房たちの一人が恐る恐る、

「では、この頃洛中に流行ります摩利の教とやら申すのも、やはり無常を忘れさせる新しい方便なのでございましょう。」と、御話の楔を入れますと、もう一人の女房も、

「そう申せばあの教を説いて歩きます沙門には、いろいろ怪しい評判があるようでございませんか。」と、さも気味悪そうに申しながら、大殿油の燈心をわざとらしく掻立てました。

二十

「何、摩利の教。それはまた珍しい教があるものじゃ。」

何か御考えに耽っていらしった若殿様は、思い出したように、御盃を御挙げになると、その女房の方を御覧になって、