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じゃしゅうもん
邪宗門
「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页
これもあると思えばあり、ないと思えばないような幻ではございます。が、その宙を踏んで飛舞する容子は、今しも摩利信乃法師の脳上へ、一杵を加えるかと思うほど、神威を帯びて居ったのでございます。
しかし当の摩利信乃法師は、不相変高慢の面をあげて、じっとこの金甲神の姿を眺めたまま、眉毛一つ動かそうとは致しません。それどころか、堅く結んだ唇のあたりには、例の無気味な微笑の影が、さも嘲りたいのを堪えるように、漂って居るのでございます。するとその不敵な振舞に腹を据え兼ねたのでございましょう。横川の僧都は急に印を解いて、水晶の念珠を振りながら、
「叱。」と、嗄れた声で大喝しました。
その声に応じて金甲神が、雲気と共に空中から、舞下ろうと致しましたのと、下にいた摩利信乃法師が、十文字の護符を額に当てながら、何やら鋭い声で叫びましたのとが、全く同時でございます。この拍子に瞬く間、虹のような光があって空へ昇ったと見えましたが、金甲神の姿は跡もなく消え失せて、その代りに僧都の水晶の念珠が、まん中から二つに切れると、珠はさながら霰のように、戞然と四方へ飛び散りました。
「御坊の手なみはすでに見えた。