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へや

部屋

宮本 百合子

「文芸春秋」1926(大正15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,792 字 · 10 页

青空文庫

彼女は、メリンスの派手な袷に着換え、振分けのお下髪(さげ)を胸の上に垂しながら、黙ってお八つをたべた。

五時頃、ラオロが二人の日本人と外出してしまうと、茶の間の気分がやっと少し楽になったように百代は感じた。二階が気になって堪らない風でいた母親も、眉の辺がからりとしたいつもの母親になった。

「――さををかきのけて出しゃばるんだから困りものだね、お源は……」

出先から帰るなり一風呂浴びた為吉は、半簾を下げた縁先で爪を剪っていた。彼は気軽そうに答えた。

「どうせ二三日のことさ」

百代は、独言のように尋ねた。

「寝台へねるのかしら――あの人」

「そんなことあるまい――な、おいね、寝台なんぞ持ち込みゃしまい?」

「ええ、夜具包でしたよ」

「寝台なんか担ぎ込んだらとても六畳で納るもんじゃない」

百代はラオロがどんな工合に部屋をしたのか知りたくて、知りたくて、たまらなくなって来た。両親たちが、何でもなさそうにラオロのことを話し、一刻も早く馴れてしまおうとすると、一層百代の好奇心は募った。大人たちが、わざと詰りもしなそうに自分の前で云っているように落付かない気持がする。

百代は、するりと茶の間をぬけて台所の方へ行った。