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ごうすけほうし
郷介法師
国枝 史郎
「ポケット」1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,163 字 · 21 页
「戦国の常だ。構うものか」
「それは左様でございますとも。しかし、この頃何となく、鎗玉に上げられたあの老人が、私の実の父かのように思われてならないのでございさます」
「アッハハハハ馬鹿なことを申せ。それはお前の心の迷いだ」
「……私は捨児でございましたそうで?」
「うん、そうだ、当歳の頃、光善寺の門前に捨られていたよ」
やがて郷介はご前を退り自分の邸へ帰って来た。
と、意外な来客があった。
「おおお前は杢介ではないか?」
「はい」と云って杢介は懐中から書面を取り出した。
「私にとってはご主人様、貴郎様にとりましてはお父上様が、磔柱へ付けられる前に、そっと私めに手渡した大事な書面でござります。是非とも貴郎様へ差し上げるようにと、仰せられましてござります」
「どれ」と云って郷介は書面を取って開いて見た。読んで行くうちに彼の顔は次第に血の色を失った。読んでしまうと眼を閉じた。そうして口の中で呟いた。
「案じた通りだ。……俺は親殺しだ。……恐ろしい運命。……坊主になろう。……」
7
しかし郷介が実父だと思った郷左衛門という侍は、実父ではなくて養父なのであった。そうして郷介の実父なるものはついに何者だか解らないのである。