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きょうしゅう
郷愁
佐左木 俊郎
「若草」1926(大正15)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,473 字 · 3 页
私はよく、ホームシックに襲われる少年であった。
八百屋の店頭に、水色のキャベツが積まれ、赤いトマトオが並べられ、雪のように白い夏大根が飾られる頃になると、私のホームシックは尚一入烈しくなるばかりであった。
そんなとき、私は憂鬱な心を抱いて、街上の撒水が淡い灯を映した宵の街々を、微かな風鈴の音をききながら、よくふらふらと逍遙あるいたものであった。
店の上に吊された、五十燭ぐらいの電燈が、蒼白い、そしてみずみずしい光をふりまき、その光に濡れそぼっている果物屋の店や、八百屋の店は、ますます私の心を、憂鬱に、感傷的にしてしまうばかりであった。併し私は、馬鹿馬鹿しいほど淋しく、物哀れな気分になりながらも、こうして八百屋の店や果物屋の店頭を覗いて歩くのが好きだった。
そうして逍遙うた揚句には、屹度上野の停車場へやって行ったものであった。
停車場の待合室にはどこの停車場にも掛かっているような、全国の、国有鉄道の地図が掲げられていた。
その地図の下に立ってみすぼらしい身装の青年が、その地図の上の距離を計ったり、凝っと凝視ていたりして、淋しい表情で帰って行くのを、私は幾度見かけたか知れなかった。