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きょうしゅう
郷愁
佐左木 俊郎
「若草」1926(大正15)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,473 字 · 3 页
私はそういう人々を、殆んど毎晩のように見かけた。なかには、眼を潤ませて帰る青年もあったし、ちかちかと睫毛を光らせて戻る少年もあった。
併し私は、そういう人々を、ただ単に、見たとばかり言い得ないような気がする。
その人々の姿こそ、当時の私の姿ではなかったろうか? 歩いてでも郷里にかえりたかった。当時の私の心ではなかったろうか?
或る夜のことであった。私は停車場で、偶然一人の友人と落ち合った。彼は非常に沈んでいたようであった。
「誰か送って来たの? それとも誰か来るの?」と私は訊いた。
「ううん。」
彼は神経質な眼をして頭を振った。
「君は?」と彼は訊いた。
「僕も、ただ散歩に。――ここへ来ると、田舎の言葉が聞けるもんだから……」
「僕もそうなんだよ。ただそれだけで、僕は小石川からわざわざ出掛けて来るんだよ。」
彼はこう言って、深い深い溜め息を一つついた。
私と彼とは、黙々として目を伏せて公園前の方へ歩いて行った。そうして歩きながら、彼は低声に、哀れっぽい調子をつけて歌ったのであった。
停車場の、地図に指あて故里と
都の距離をはかり見るかな。
私も彼も、大望を抱いて東京へ出て来たのであった。