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しゅうぶん
醜聞
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1964(昭和39)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,900 字 · 46 页
みじめだなと、功兵衛は相手から眼をそらした。
「いかがでしょう、あと半年」苅田は急に話を元へ戻した、「来年の四月までには必ず片をつけますが」
「あなたはまえにもそう云われた」
「功刀さんには正直に申上げた」と苅田はきちんと膝へ両手を置いた、「わたしは私利私欲のためにやったのではない、生計の苦しさに耐えかねた者たちのため、見るに見かねてやったことです」
また庇へ枯葉が散りかかり、それがみぞれでも降りだしたかのように聞えた。
「いますぐにと云っても、かれらには返済する能力がありません」苅田は続けていた、「しかしここで半年のゆとりがあれば、間違いなく金は集まると思う、いや必ず、たとえわたしの身をはたいても集めてみせます」
功兵衛はちょっとまをおいて反問した。
「あなたは楯岡さんのことを覚えていますか」
苅田壮平は口をあき、眼をみひらいた。耳の側でとつぜん鐘を鳴らされでもしたような感じで、すぐには返辞もできないようすだった。
「功刀さんは」とようやくにして、苅田はさも心外そうに云った、「あなたはこの私をそんなふうに考えていらっしゃるのですか」
「覚えているかどうかを聞いたまでです」