轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じゅうべえさんのいっか
重兵衛さんの一家
寺田 寅彦
「婦人公論 第十八年第一号」1933(昭和8)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,089 字 · 14 页
その頃を見計らって箒で掃き集めると米俵に一俵くらいは容易に捕れるというのである。また、鴉を捕る法としてはこんなのがある。牛の脊中へ赤い紙片を貼付け、尻尾に摺粉木を一本縛り付けて野良へ出しておく。鴉が下りて来て牛の脊中の赤い紙を牛肉と思ってつつくと、牛は蠅でも追う気でぴしゃりと尻尾ではたく、すると摺粉木の一撃で鴉が脆くも撲殺されるというのである。
これらの話は、柳家小さんの落語のごとく、クライスラーのクロイツェルソナタのごとく実に何度となく同じ聴衆の前に繰返されて、そうしてその度ごとに新しくその聴衆を喜ばしたものである。繰返せば繰返すにつれてますますその面白味の深さを加えたものである。この点では論語や聖書も同じことであるのみならず、こういう郷土的色彩の濃厚な怪談やおどけ話の奥の方にはわれらとは切っても切れない祖先の生活や思想で彩られた背景がはっきりと眺められるのであるから、こういう話を繰返し聞かされている間にわれわれの五体の幾億万の細胞の中に潜んでいる祖先の魂が一つ一つ次第次第に呼び覚されて来るのであった。中学時代になってからやっとイソップやグリムやアンデルセンにめぐり合って日本の外に他の世界があること、そこにはわれらとはよほどちがった生活と思想のあることを教えられたのであった。