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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂、廃める。
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 25,621 字 · 52 页
二
」
「僕は非常に愉快だ、嗚呼愉快だ。僕はきっと、愉快にやります。僕はとかくに、人がうらやましく見えてしかたがなかった。人をうらやむ心が起こると自分が悲しくなるのです。もう僕は人をうらやまない、きっと楽しく学問をやる。」
こんな話が、ごったまぜにくり返され、矢野は愉快に、ここにとまった。
二
矢野は本郷台町に友人のいる下宿をたずねて、幸いに友人もおって取りあえず下宿の相談をすると、この家でどうにか都合ができるだろう、まあ話せという。友人は法科の学生で矢野より一年早く鹿児島高等を出た中島という男だ。どどいつが大好きだという元気のいい男だ。矢野はあまり中島を好かぬのだけれど、あてどもなく下宿をさがすもいやだから、ともかくもと思ってたずねたのだ。
茶が出る。宿の女房も出て来た。あき間が二間あるから見てくれという。矢野はなるべく中島の座敷と離れるを希望しておったが、仕合わせとここからもっとも離れた西端の隅座敷をえらぶことができた。日当たりもよく室もややきれいだ。さっそく荷物を運び入れて落ちついた。中島は学校へ出る。矢野は国もとやら、友人やらへ、当分ここにいるおもむきの信書を書いた。