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ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:奈々子、隣の嫁、春の潮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,271 字 · 144 页

青空文庫

一株一握りにならないほど大株に肥えてる。穂の重みで一つらに中伏に伏している。兄夫婦はいかにも心持ちよさそうに畔に立ってながめる。西の風で稲は東へ向いてるから、西手の方から刈り始める。

おはまは省作と並んで刈りたかったは山々であったけれど、思いやりのない満蔵に妨げられ、仏頂面をして姉と満蔵との間へはいった。おとよさんは絶対に自分の夫と並ぶをきらって、省作と並ぶ。なんといってもこの場では省作が花役者だ。何事にも穏やかな省作も、こう並んで刈り始めて見ると負けるは残念な気になって、一生懸命に顔を火のようにして刈っている。満蔵はもうひとりで唄を歌ってる。おとよさんは百姓の仕事は何でも上手で強い。にこにこしながら手も汚さず汗も出さず、綽々として刈ってるが、四把と五把との割合をもってより多く刈る。省作は歯ぎしりをかんで競うて見ても、おとよさんにかけてはほとんど子供だ。おとよさんは微笑で意を通じ、省作のスガイを十本二十本ずつ刈りすけてやる。おはまはなんといっても十四の小娘だ。おとよさんのそのしぐさに少しも気がつかない。満蔵はひとりでうたい飽きて、

「おはまさアうたえよ。