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のぎくのはか
野菊の墓
伊藤 左千夫
「ホトトギス」1906(明治39)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,539 字 · 67 页
僕はズボン下に足袋裸足麦藁帽という出で立ち、民子は手指を佩いて股引も佩いてゆけと母が云うと、手指ばかり佩いて股引佩くのにぐずぐずしている。民子は僕のところへきて、股引佩かないでもよい様にお母さんにそう云ってくれと云う。僕は民さんがそう云いなさいと云う。押問答をしている内に、母はききつけて笑いながら、
「民やは町場者だから、股引佩くのは極りが悪いかい。私はまたお前が柔かい手足へ、茨や薄で傷をつけるが可哀相だから、そう云ったんだが、いやだと云うならお前のすきにするがよいさ」
それで民子は、例の襷に前掛姿で麻裏草履という支度。二人が一斗笊一個宛を持ち、僕が別に番ニョ片籠と天秤とを肩にして出掛ける。民子が跡から菅笠を被って出ると、母が笑声で呼びかける。
「民や、お前が菅笠を被って歩くと、ちょうど木の子が歩くようで見っともない。編笠がよかろう。新らしいのが一つあった筈だ」
稲刈連は出てしまって別に笑うものもなかったけれど、民子はあわてて菅笠を脱いで、顔を赤くしたらしかった。今度は編笠を被らずに手に持って、それじゃお母さんいってまいりますと挨拶して走って出た。
村のものらもかれこれいうと聞いてるので、二人揃うてゆくも人前恥かしく、急いで村を通抜けようとの考えから、僕は一足先になって出掛ける。