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のぎくのはか

野菊の墓

伊藤 左千夫

「ホトトギス」1906(明治39)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,539 字 · 67 页

青空文庫

お母さんもよくそうおっしゃいました。つまらないものですけど何とかかとか分けてやってますが、また政夫さんの様に情深くされると……」

民子は云いさしてまた話を詰らしたが、桐の葉に包んで置いた竜胆の花を手に採って、急に話を転じた。

「こんな美しい花、いつ採ってお出でなして。りんどうはほんとによい花ですね。わたしりんどうがこんなに美しいとは知らなかったわ。わたし急にりんどうが好きになった。おオえエ花……」

花好きな民子は例の癖で、色白の顔にその紫紺の花を押しつける。やがて何を思いだしてか、ひとりでにこにこ笑いだした。

「民さん、なんです、そんなにひとりで笑って」

「政夫さんはりんどうの様な人だ」

「どうして」

「さアどうしてということはないけど、政夫さんは何がなし竜胆の様な風だからさ」

民子は言い終って顔をかくして笑った。

「民さんもよっぽど人が悪くなった。それでさっきの仇討という訣ですか。口真似なんか恐入りますナ。しかし民さんが野菊で僕が竜胆とは面白い対ですね。僕は悦んでりんどうになります。それで民さんがりんどうを好きになってくれればなお嬉しい」

二人はこんならちもなき事いうて悦んでいた。