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のぎくのはか

野菊の墓

伊藤 左千夫

「ホトトギス」1906(明治39)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,539 字 · 67 页

青空文庫

のものは一つ宛四つのものは二つ宛、着物を拵えてもあれに一枚これに一枚と少しも分け隔てをせないできた。民子も真の親の様に思ってくれ私も吾子と思って余所の人は誰だって二人を兄弟と思わないものはなかったほどであるのに、あとにも先にも一度の小言をあんなに悔しがって夜中泣いて呉れなくともよさそうなもの。市川の人達に聞かれたらば、斎藤の婆がどんな非度いことを云ったかと思うだろう。十何年という間我子の様に思ってきたこともただ一度の小言で忘れられてしまったかと思うと私は口惜しい。人間というものはそうしたものかしら。お増、よく聞いてくれ、私が無理か民子が無理か。なアお増」

母は眼に涙を一ぱいに溜めてそういった。民子は身も世もあらぬさまでいきなりにお増の膝へすがりついて泣き泣き、

「お増や、お母さんに申訣をしておくれ。私はそんなだいそれた了簡ではない。ゆんべあんなに泣いたは全く私が悪かったから、全く私がとどかなかったのだから、お増や、お前がよく申訣をそういっておくれ……」

それからお増が、

「お母さんの御立腹も御尤もですけれど、私が思うにャお母さんも少し勘違いをして御いでなさいます。