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のぎくのはか

野菊の墓

伊藤 左千夫

「ホトトギス」1906(明治39)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,539 字 · 67 页

青空文庫

お母さんは永年お民さんをかわいがって御いでですから、お民さんの気質は解って居りましょう。私もこうして一年御厄介になって居てみれば、お民さんはほんと優しい温和しい人です。お母さんに少し許り叱られたって、それを悔しがって泣いたりなんぞする様な人ではありますまい。私がこんなことを申してはおかしいですが、政夫さんとお民さんとは、あアして仲好くして居たのを、何かの御都合で急にお別れなさったもんですから、それからというもの、お民さんは可哀相なほど元気がないのです。木の葉のそよぐにも溜息をつき烏の鳴くにも涙ぐんで、さわれば泣きそうな風でいたところへ、お母さんから少しきつく叱られたから留度なく泣いたのでしょう。お母さん、私は全くそう思いますわ。お民さんは決してあなたに叱られたとて悔しがるような人ではありません。お民さんの様な温和しい人を、お母さんの様にあアいって叱っては、あんまり可哀相ですわ」

お増が共泣きをして言訣をいうたので、もとより民子は憎くない母だから、俄に顔色を直して、

「なるほどお増がそういえば、私も少し勘違いをしていました。よくお増そういうてくれた。