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きんごじゅうりょう
金五十両
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,843 字 · 23 页
五
「ざまあみやがれ」
お世辞たらだら去ってゆく女中の後ろへ、こう浴びせながら彼は盃を取った。
「小粒一つで閻魔が地蔵に化けやあがる、へ、たいしたこたあねえや」
飲みながら、お滝から貰った銭勘定をした、それから金包を取出して切餅になっている方の封を切り、二両一分だけ別にして紙に包むと、たて続けにぐいぐい酒を呷った。
……四本許り飲んだとき、お滝が来た。はいって来たが障子際に立ったままで、
「お話ってなんです」と冷やかに訊いた。
燗徳利の並んだ膳の上から、こっちへ移した眼もまったく冷たかった。
「まあ坐らないか」
宗吉はこう云いながら、封を切った金をざらっと畳の上へ投げ、更に二十五両包をそこへ置いた。
「……ここに五十両、これに就いて相談があるんだ」
五
「……そうね」
膳の脇に坐って、宗吉の話を聞き終ったお滝は、暫く膝を見つめていたが、やがて眼をあげた。
「貴方の云うとおり、ごまの蠅とか巾着切とかいう者かも知れないわね」
「そうでなくって五十両という金を、見ず知らずの旅の者にことづける訳があるかい、一分や二分じゃあない五十両だぜ」
宗吉は酔わない酒をもう一つ呷った。