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きんざんそうわ

金山揷話

大鹿 卓

「中央公論」1939(昭和14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,736 字 · 22 页

青空文庫

私には、一昨日の朝に定山渓で見かけた傷病兵の白衣姿がちらついてきた。また、荒涼と果しなくつづく窓外の眺めに目をさらすと、いったい隣りの車の遺骨の埋められるのは、何処の山野の果てだろうかと、そんな思いにも捉われた。窓外の自然よりもさらに荒々しい奥地の開墾地を、その墓墳の地と想像する事はなにか胸にこたえた。さっき一瞥した父親や母親らしい人々の、わが子の遺骨を抱いてかえる胸中を思うと、私の胸も切なくなった。しかし素朴な彼等は素朴にその憂患に堪えてゆくだろう。そう思わずにはいられなかった。彼等は息子の遺骨を埋めることによって、彼等の新しい土地に対して、もはや自分達の墓墳の地もここにおいて他にないというほどの感懐を深めるであろうか、それならばまたその覚悟の裡に幸福があるであろう。私はそうも思ってみた。

そうした感慨に耽ったあとで、私は、

「ねえ、市岡の遺骨も弟が郷里へ持ってかえるんだとかいってたね。今日じゃなかったかい」

と、森山へはなしかけた。

「うん、今日だ。札幌を九時五十分の急行だとかいってたから、今頃はもう長万部より先へ行ってるだろう」

森山も、新聞を読みながらもそのことを考えていたらしく、すぐ答えた。