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きんぷさん

金峰山

木暮 理太郎

「日本山岳会会報」1932(昭和7)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,206 字 · 5 页

青空文庫

高さ一尺二、三寸の銅像で、左の足で蓮花を踏み、右の足を高く上げ、左の手は腰にあて、三鈷を持った右の手を頭上に振りかざし、稍忿怒の相を帯びた半裸体のものである。之を見ると金峰山のことが想い出されて、次の機会には是非之に登りたいものだと決心した。私の金峰登山は謂わば蔵王権現の導きであるから、帰命宝蓮花を三唱して仏恩に感謝しなければなるまい。秩父の山の中で、金峰山に深い執着を感ずるのは、この為であるかも知れない。

明治二十六年の八月上旬、妙義山を振り出しに浅間、蓼科の二山に登って諏訪に出で、塩尻峠を超えて木曾路に入り、御岳を上下し、引き返して甲府へ出た、これは武田信玄の旧蹟を訪いたかったからである。この頃の私は歴史上の好きな人物に甚しく興味を感じていたので、其古蹟には山と同じように心を惹かれたのであった。此時も八ヶ岳に登って南佐久に下り『修身節約』という小学校の読本で知った有名な孝子亀松が狼を退治した内山峠を踰えて、下仁田へ出ようかとも考えたのであるが、日頃崇拝していた信玄熱が高かったので、とうとう甲府へ来てしまった。其代りかねて宿望の金峰山に登って八ヶ岳の埋合せにしようと思っていた。