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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
03 三つの足跡
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,625 字 · 26 页
」
口惜しそうにおみつが白眼んだ。その眼を見据えて藤吉はただ一言。
「久松留守。」
俯向くおみつ。藤吉は居丈高に、
「旦那は年齢が年齢だ。なあ、それにお前さんはその瑞々しさ。そこはこちとらも察しが届くが、それにしても久松留守たあよくも謀んだもんさのう。」と一歩進んで、「飛んだ久松の孫右衛門さ。旦那のいねえ夜を合図で知らせて、引っ張り込んでた情人あ誰だ? 直に申し上げた方が為だろうぜ。」
「お神さん、もういけねえ。誰だか言いな。よう、すっぱりと吐き出しな。」
傍から味噌松も口を添える。おみつは唇を噛んだ。間が続く。
と、この時、梯子段下の板間で一時に起る物音、人声。
「いた、いた。」
という彦兵衛の叫び。と、揚覆の飛ぶ響き。
「うぬっ!」と勘次。
やがて引き出そうとする、出まいとする、その格闘の気勢。と知るや、物をも言わずに味噌松は階下へ跳び下りる。
「あれいっ、幸ちゃん――。」
立ち上るが早いか、おみつは血相かえて降口へ。
「待て。」
藤吉が押えた。
「待て。よっく落ち着いて返答打てよ。」
と死物狂いのおみつを窓際へ引きずって行って、さらりと障子を開ければ鎧の渡しはつい眼の下。