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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

03 三つの足跡

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,625 字 · 26 页

青空文庫

彦兵衛を呼んで何事か囁いた。彦兵衛は愕いて訊き返した。藤吉が白眼んだ。

「承知しやした。」

行こうとする彦兵衛を、それとなく藤吉は呼び停めて、

「在ったら口を割ってこいよ。いいか、口だぞ。」

と、それから、荒々しく、

「包み隠さず申し立てりゃあお上へ慈悲を願ってやる。なに? やいやい、まだ知らぬ存ぜぬと吐きやがるか。」

と二人の前へ立ち塞がったが、

「野郎、尻尾を出せ!」

と喚きざま、突然足を上げて幸七の顔を※(「てへん+堂」、第4水準2-13-41)っと蹴った。おみつが庇おうとする。おみつを打とうと藤吉が腕を振り上げると、

「親分、奴はもう白状したのも同然、失礼ながらお手が過ぎやせんか。」

味噌松が出張った。

「そうか。」藤吉は手持不沙汰に、「勘、お前はこの二人についてろい。――ええ、そこで松さん、こりゃあこれでいいとして、ちょっくら裏へ出てみようじゃごわせんか。」

言いながら不審気な味噌松を先に、藤吉はがらりと勝手の腰高を開けた。

四

「松さん、こりゃあどうだ。」

やにわに藤吉は蔵の前の小溝へ立った。素足に砕けて玉と散る水。味噌松はぽかんと眺めていた。