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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

06 巷説蒲鉾供養

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,319 字 · 29 页

青空文庫

折れた線香からも結構煙は昇る。

藤吉は茶の間へ坐った。

「閻魔法王五道冥官、天の神地の神、家の内では――。」

と膝の上の巫女の文をここまで読み下して、藤吉は鼻を擦った。畳のけばをむしった。深く勘考する時の習癖である。

惑信と言えばまず家の方位だ。その凶は暗剣殺で未申――西南――の方、これを本命二黒土星で見れば未申は八白の土星に当るから坤となる。卦からいうと坤為レ地といってこの坤という字は土である。家の暗剣殺の土とは、門の西南の地面という意であろう。坤はまた乾坤の坤で、陰のあらわれすなわち婦女という義になるから、ここで門内西南の地に女ありと考えなければならない。

今日は酉年の酉の日だ。日柄は仏滅定。六曜星が仏滅でこれは万大凶を示しているが、十二直の定はすべて決着をつくるに吉とある。家を護る土公神はというと、春は竈、夏は門、秋は井、冬は庭にありというから、夏から秋口へ向うこのごろのこと、まず門と井戸とに見当をつけておきたい。これで家に門と井戸とがあって、その門の西南に女がいるということになった。

近ごろめっきり白髪の殖えた材木屋風の髷を藤吉はしきりに捻る。