轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

07 怪談抜地獄

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,998 字 · 32 页

青空文庫

主人夫婦から男衆小僧にいたるまで、烈風中の焔に巻かれて皆あえない最後を遂げたのだった。この叶屋の全滅は、数多い罹災のうちでも、瓦本にまで読売りされて江戸中の人びとに知れ渡っていた。

が、この不幸中の幸ともいうべきは愛娘のお露が、その時寺島村の寮へ乳母と共に出養生に来ていたことと、虫の報せとでもいうのか、死んだ叶屋の主人が、三千両という大金をこの寮の床下へ隠しておいたことであった。壁の大阪土の中に掘穴を塗り込んで、それを降りれば地下の銭庫へ抜けられるように仕組んであった。

「抜地獄」と称するこの寮の秘密を、お露は故き父から聞いて知っていたのである。が、彼女もその富を享楽する機会を与えられなかった。有って生れた美貌が仇となり、無頼漢同様な、さる旗下の次男に所望されて、嫌がる彼女を金銭で転んだ親類たちが取って押さえて、無理往生に輿入れさせようというある日の朝、思い余ったお露は起抜けに雨戸を繰ってあたら十九の花の蕾を古井戸の底深く沈めてしまった。と、それと同時に抜地獄の秘密の仕掛けも、三千両というその大金も、永劫の暗黒に葬り去られることになった――とこういう因果話のはしはしが、お露の亡霊からいつ果てるともなく、壁へ向って呟かれるのであった。