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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

07 怪談抜地獄

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,998 字 · 32 页

青空文庫

「よし。」

釘抜藤吉は頷首いた。

「勘、背後へ廻れ、めったに抜くなよ――おう、伝二郎さん、訴人が突っ走っちゃいけねえぜ。」

苦笑と共に藤吉は、死んだ気の伝二郎を引っ立てて大胯に進んだ。ぱったり出遇った。

「大須賀玄内!」

と藤吉が低声で呼びかけた。欠伸をして男は通り過ぎようとする。

「待った、河内屋の御隠居さま!」

言いながら藤吉はその前へがたがた震えている伝二郎を押しやった。顔色もかえずに男は伝二郎を抱き停めた。

「おっと、これは失礼――。」

「喜三郎。」と藤吉は前に立った。「蚤取りの喜三さん、お久し振りだのう。」

ぎょっとして男は身を引いた。

「お馴染の八丁堀ですい。」

と藤吉は軽く笑って、

「この里で御用呼ばわりはしたくねえんだ。お前だって女子衆の前でお繩頂戴も気のきかねえ艶消しだろう。大門出るまで放し捕りのお情だ。喜三、往生ぎわが花だぞ、器用に来い。」

女たちは悲鳴を揚げて一度に逃げ散った。下駄を脱ぐと同時に男は背後を振り返った。が、そこには勘次がやぞうを極め込んでにやにや笑って立っていた。男も笑い出した。

「蚤取り喜三郎、藤吉の親分、立派にお供致しやすぜ。