轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
01 のの字の刀痕
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,145 字 · 19 页
現今の言葉で言えば、非常に推理力の発達した男で、当時人心を寒からしめた、壱岐殿坂の三人殺しや、浅草仲店の片腕事件などを綺麗に洗って名を売り出したばかりか、そのころ江戸中に散っていた大小の目明し岡っ引の連中は、大概一度は藤吉の部屋で釜の下を吹いた覚えのある者ばかりであった。実際、彼等の社会ではそうした経験がなによりの誇りであり、また頭と腕に対する一つの保証でもあった。で、繩張りの厳格な約束にもかかわらず、彼だけはどこの問題へでも無条件で口を出すことが暗黙の裡に許されていた。が、自分から進んで出て行くようなことは決してなかった。その代り頼まれればいつでも一肌脱いで、寝食を忘れるのが常であった。次から次と方々から難物が持ち込まれた。それらを多くの場合推理一つで快刀乱麻の解決を与えていた。名古屋の金の鯱にお天道様が光らない日があっても、釘抜藤吉の睨んだ犯人に外れはないという落首が立って、江戸の町々に流行りの唄となり無心の子守女さえお手玉の相の手に口吟むほどの人気であった。
江戸っ児の中でも気の早いいなせな渡世の寄り合っている八丁堀の合点長屋の奥の一棟が、藤吉自身の言葉を借りれば、彼の神輿の据え場であった。