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すずきもんど
鈴木主水
久生 十蘭
「オール讀物」1951(昭和26)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,827 字 · 26 页
総じて館の討入りには、順法と逆法がある。いずれとも時宜に従うのはいうまでもないが、目ざす敵を一人だけに限っておくのが定法だ。その辺の心得がなかったので、野呂はやりそくなったのだとみえる。ときに、貴様が討果したいと思っているのは、男か女か」
「これはまた意外なことを。男にも女にも、討ちたいものなどありません」
「先日、明良の邸へ参ったとき、十三日の後の月見こそ、一期の折というようなことを申したそうな。なんのことだ」
「今夜の御宴会に連舞をいたすことになって居ります、そのことです」
「連舞を。誰が」
「手前が」
「貴様に舞など舞えるのか」
「この程から幸若秀平に舞を習って居ります。いちどお目にかけましょう」
「どのような所存で」
「郷に入っては郷にしたがう。こうなくては、勤めかねます」
「すりゃ、その面と装束は、舞を舞うためのものか」
「さようでございます」
伝内はまじまじと主水の顔を見ていたが、大きな声で、
「たわけ」
と一喝すると、荒々しく座から立って行った。
当夜の客には、尾張宗春卿、酒井日向守、松平和泉守、松平左衛門佐、御親類は能勢因幡守、榊原七郎右衛門、同大膳などがいた。