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てつのきりつ
鉄の規律
平林 初之輔
「新青年 第一二巻第一〇号」1931(昭和6)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,016 字 · 30 页
四
「しょうのない奴だな、じゃ、二千十八番の方へ乗ってゆけ。あれは最新着のホイツペットだ。九十六番の方はいけないよ。我が輩もすぐ出かける用事があるんだから、東京駅へ、総理を迎えにゆかにゃならんのでな」
「はっ、有り難う」
勝男は大急ぎで出ていった。
局長は大きくのびをして秘書官を振り返って言った。
「さあ、君、我々もすぐに出かけよう」
四
九時四十分頃、桜田門の停留場から、少し参謀本部の方へ寄った車道に、ビールの空瓶を山のように積んだ一台の貨物自動車が、どこかに故障を起こしたと見えて停止していた。運転手は車から降りて、小首をかしげながら、故障の部分を見きわめようとするかのように、車体の下をのぞきこんだり、タイヤをたたいてみたりして目くばせしていた。
交通巡査がそれをもどかしがって、舌打ちをしながら、始終運転手を睨んで目くばせしていた。
それから十分ばかりたつと、九十六号の自動車が、辷るように東亜局の門を出た。
交通巡査は突然、貨物自動車の運転手に向かって、いかにも腹だたしげに「こらっ」と怒鳴った。すると運転手は、吃驚して、ばね仕掛けの人形のように、いきなり運転手台へとび乗って、ハンドルを手にもち、ブレーキをはずした。