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てつのきりつ
鉄の規律
平林 初之輔
「新青年 第一二巻第一〇号」1931(昭和6)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,016 字 · 30 页
ん」
九十六号の運転手が警官の臨床訊問に答えたのは、だいたい次のごとくであった。
「勝男様が、局長閣下の至急のお使いだからと仰言ったのでこの方をおのせ申して、小石川まで行く途中桜田門前でカーブしようとしますと、いきなり、貨物車が走ってきてぶつかりましたので、こちらではどうするひまもありませんでした。それからあとのことは私はおぼえていませんが、車体の破損の程度から考えてみましても、勝男様のご負傷の位置や性質から考えてみましても、決してあの衝突のために、あれ程のご重傷をなさったものとは思われません。ああいう場合には運転手は必ず負傷しますが、乗っておられる方は大抵かすれ傷ぐらいですむのが普通です」
交通巡査は、二人の運転手の証言を確認してから彼自身の意見をつけたした。
「そういうわけですから、私はどちらの過失とも言えないと思います。全くあれは不可抗力でした。九十六号があそこでカーブしたのがわるいとも言えませんし、貨物自動車がまっすぐに進んでいったのが悪いとも言えません。あそこのカーブは右回りですから、しぜん大きなカーブになります。そこを咄嗟の場合双方とも目測を誤ったものと見えます。