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てつのきりつ

鉄の規律

平林 初之輔

「新青年 第一二巻第一〇号」1931(昭和6)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,016 字 · 30 页

青空文庫

かく解する時正義党中央執行委員より総監に宛てたる文書の意味も自ら明瞭となる。

以上の事実に基づきて速刻捜査の方針をたてられんことを建言す。

捜査課長は読み終わると

「成る程」と大きくうなずいた。額には脂汗がにじみ顔色は蒼白になった。

「では早速、深井と自動車の運転手とを拘引しなくちゃならん」彼は興奮して起ち上がった。

「ところが課長、深井の奴はもうとうに逃げていましたよ」と刑事はしずかに言った。

「私は今朝、この結論に達したので、急いで内偵してみましたが、深井は、あの日からどこかへ逃げてしまって、行方は誰にもわからんということです。さっそく本籍地の警察へ電話をかけて、いま照会中なんです」

「運転手の方は?」

「やっぱり駄目でした。一昨日ひまをとって出ていったそうです。この方は本籍も姓名も怪しいと思うのです。もっとも、自動車屋の主人の話では、その男は、実直な男で、よく働いてくれたということでしたがね。一体に正義党員の特徴は、何か職業をもっていて、絶対に普通の人と見わけがつかず、業務にはみな非常に勤勉だという点です。ただ奴らの間にはいわゆる鉄の規律というやつが徹底していて、生命を賭して事に当たり、生命を賭して秘密を厳守しているという点です。