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てつのきりつ

鉄の規律

平林 初之輔

「新青年 第一二巻第一〇号」1931(昭和6)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,016 字 · 30 页

青空文庫

いいかね君、塔の上から僕が投げ出されたとすれば、否でも応でも僕は落ちるより他はない。僕の意志には僕の肉体の墜落を阻止する力は全然ないのだ――」

「わかってる。ところで君には成算があるのか?」

「無論、僕は三十号から命令をきいた瞬間に、それを遂行する手段をはっきり頭の中に描いたよ。まあもう少しこちらへ寄りたまえ!」

彼は二百二十四号の耳のそばへ口をもっていって、何事かをひそひそと囁いた。

二百二十四号は聞きおわると大きくうなずいた。

「そりゃ素晴らしい名案だ」と彼は低声で叫んだ。「僕は実は引き受けるには引き受けたものの、どうしていいかさっぱり目やすがつかなんだのだ」

「ではもうそれで打ち合わせはすんだわけだね、君の方に異議がないとすれば」と七十六号は腕時計を見ながら言った。「まだ十五分しかたっていない。二時間の猶予は長すぎたね」

「と言って外へ遊びに出てくるわけにもいかずね、まあ煙草でもすうか」

二人は巻煙草を出して火をつけた。重苦しい沈黙が続いた。

「ねえ君」と七十六号が沈黙を破った。「僕は今度の中央委員の命令は言語道断だと思うよ。いやしくも暴力をもって個人を殺害するということは、我が党の光輝ある伝統にも反するし、人類正義の原則にも反する……」