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てつのきりつ
鉄の規律
平林 初之輔
「新青年 第一二巻第一〇号」1931(昭和6)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,016 字 · 30 页
「君は中央委員の命令を批判しようというんだね?……」
「そうだ。だが、僕は命令には絶対服従する。服従を前提としての批判なら許されてもいいじゃないか? 君はそれだけの自由も我々に認めんのか? 全くの機械で甘んずるのか?」
「むろん我々党員の辞書には自由という言葉はあり得ない。いま君の口から出た自由というけちな言葉のために、我が党の歴史はいくたび無益な血で彩られたか知れないのだ。鋼鉄のごとき党の規律のためには、我々は全くの機械となりおおせなくてはならぬ。しかも機械といっても、我々は誰一人完全な機械ではなくて、みな部分品に過ぎんのだ。中央委員によって我々は一つの機械に組み立てられて、はじめて機能を営むことができるんだ。我々の党の組織は、将来の社会の完全な雛型で、そこには最も厳密な分業と協業とが行われている。我々はただ一つの命令を実行すればいいのだ。いわば一つの鎖の環なんだ。鎖はそれを使う人の意志に従うので、自分の意志に従うのじゃない。鎖の環には意志も自由も必要でない。絶対服従があるのみだ!」
「もうよしたまえ、そのわかりきった講義は。でないと僕は君を軽蔑したくなるからね。