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かなづち
鉄鎚
夢野 久作
「新青年」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,659 字 · 62 页
「……ウーン……そんなら早くくれりゃあいいのに……」
「……だけどね……まだ頭の固まらないうちに株だの、お金だのを持たせると慾がさして、株だのお米だのの上り下りがわからなくなるから、まだなかなか譲れない。俺も昔はかなり頭がよかったんだけど、あまり早くから慾にかかったせいかして、肝玉が小さくなって相場が当らなくなったんだ。それを助けてくれたのが貴方なんですって……」
「それあ本当だ。叔父の正直なところだろうよ」
「……でしょう。だから叔父さんは、あなたに感謝しててよ。あなたを電話の神様だって云っててよ」
「おだてちゃいけない……」
と私は投げ出すように云った。浴槽のふちに頭を載せて、手足を海月のように漂わそうとこころみながら……。そうすると彼女はチョットそこらを見廻しながら、その私の頭のすぐ横に、青白い、大きな曲線美を持って来て、これ見よがしに腰をかけた。恰もその肉体の魅力で私を脅迫するかのように、真珠色に濡れた乳をゆらめかせながら、私の顔をニッコリと覗き込んだ。声を低くして囁いた。
「おだてるのじゃないわよ。……あなた考えなくちゃ駄目よ。……ネ……叔父さんはこの頃、あなたを養子にする事にきめたのよ。