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『はちのこ』から『ごちゅうあん』まで

『鉢の子』から『其中庵』まで

種田 山頭火

「「三八九」復活第四集」1932(昭和7)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,548 字 · 10 页

青空文庫

はいられない。

こうして、身にあまる恩恵につつまれつつ、私は東漂西泊した。鉢の子という題名は私の句集にふさわしいものであった。一鉢千家飯、自然が人が友が私に米塩と寝床とをめぐんだ。

庵居の場所を探ねるにあたって、私は二つの我儘な望みを持っていた。それが山村であること、そして水のよいところか、または温泉地であることであった。

最初、嬉野温泉でだいぶ心が動いた、そこは、水もよく湯もよかった。視野が濶けすぎて、周囲がうるさくないこともなかったけれど、行乞の便利は悪くなかった。しかし何分にも手がかりがない。見知らぬ乞食坊主を歓迎するほどの物好きな人を見つけることが出来なかった。

ついで足をとめたのが川棚温泉である。関門の都市に遠くない割合に現代化していない。山もうつくしいし湯もあつい。ことにうれしいのは友の多い都市に近いことであった。私はひとりでここが死場所であるときめてしまった。

花いばらここの土とならうよ

こんな句が口をついて出るほどひきつけられたので、さっそく土地借入に没頭した。人の知らない苦心をして、やっと山裾の畑地一劃を借入れる約束はしたが、それからが難関であった。