轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
国枝史郎『銅銭会事変 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銅銭会事変、大鵬のゆくえ、紅白縮緬組、三甚内。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,745 字 · 216 页
それが武士の額に当たった。
「フーッ」
と我知らず呼吸を吹く。その間にパッと飛び立った男は右手を懐中へ突っ込むと初めて匕首を抜いたものである。
「さあ来やあがれこん畜生!」――こう罵った声の下からハッハッハッと大息を吐くのは体の疲労れた証拠である。しかも彼は罵りつづける。
「……おおかたこうだろうとは思っていたが騙し討ちとは卑怯な奴だ。俺で幸い他の者なら、とうに初太刀でやられるところだ。……さてどこからでも掛かって来い! 背後を見せる俺じゃねえ。おや、こん畜生黙っているな。何んとか云いねえ気味の悪い野郎だ」
云い云いジリジリと付け廻す。相手の武士は片身青眼にぴたりと付けたまま動こうともしない。
しかし不動のその姿からは形容に絶した一道の殺気が鬱々として迸しっている。どだい武道から云う時はまるで勝負にはならないのであった。武士の剣技の精妙さは眼を驚かすばかりであって名人の域には達しないにしても上手の域は踏み越えている。絶えず左手は遊ばして置いて右手ばかりを使うのであるが、それはどうやら円明流らしい。空掛け声は預けて置いて肉を切らせて骨を切るという実質一方の構えである。